うざゴリ#8|ひとり暮らしの親の孤独死×父のことを何も知らない

うざゴリ

齢73にして母から三下り半を突きつけられ「ポイ」された父。
私たち姉弟の大好きだった父は今は昔。

「縦のモノを横にもしない大酒のみの頑固なウザいゴリラ」と化した父は、浴室からひとりでぽっくり旅立った。山積みの問題と未処理の面倒と、どうしようもない笑いを数多く遺して――。合掌、うざゴリ(没75)

うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #8

お父様は帰宅後、家の鍵をどこに置かれていましたか?

「わかりません、すみません」
父のルーティンについていくつか質問をうけたけれど、そのどれもを満足に答えることができなかった。

この場において憶測やウソで誤魔化すことはできない。なぜなら相手は捜査一課。「加害者、容疑者がいる可能性」を探っている最中なのだから、迂闊な発言で手錠がちらつく人生になるのはごめんだ。

なにも知らないんだな、お父さんのこと。

ともかく私はこの事実に打ちのめされていた。
交流の希薄な親子。今どきこんな家族も珍しくはないはずで、私の周囲にも何組かはいる。

けれど、鍵の置き場所も知らなければ、メインバンクがどこだとかどこのなんの保険に入っているだとか、実印はどこだとか――私はなにも答えられなかった。

万一に備えてそういったことも教えてほしいと父に言ったのは、2年前の9月と去年の9月。

父から返ってきたのは「お前たちは俺に早くこの世からいなくなってほしいみたいだな。車も取り上げ免許も取り上げ、金がほしいのか? 家がほしいのか?!」だった。

それでも捜査一課は優秀でリビングに隣接にした和室には、探し出された貴重品や身分証明書の数々が整然と並んでいた。

「あとは家の鍵だけなんですよね」「弟さん達は御存じないでしょうか? こちらにはいつ頃到着予定ですかね」「お母さまにまだ連絡はとれそうにないですか」

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