長く芸能界にいた。もちろん出役のわけはなくて。
さらにずーっとずうっと遡る。海外で、長女として私は生まれた。
よその国にいても知っていた。
「志村けん」という偉大なコメディアンが日本にいることを。
その国にいても聞いていた。
「上岡龍太郎」という一流に弁の立つ名司会者がいることを。
会ってみたい、この2人に。
動機なんてそんなものだった、子どもだったし。だけど、憧れの2人がいる日本に住んでみたいと夢を見た。それにはまずどうすればいい?
日本語を話せるようにならなければ。
今みたいにクリックやタップひとつでよその国の言葉が学べるわけではなかったから、たぶんすごく、あの頃の私はがんばったはずだ。
1/2ではない。3つの国のミックス。これが私のアイデンティティ。
大好きだった祖母は、私に会うたびに目じりをさげてこう言った。
「Melody、もうごはん食べた?」