わたしが旅にでる理由[2]|人生の、ね。

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私の毎日

くぅ、ダメだ。もうダメだ。私、人生の底辺に居るんだ今。

そう思っていた。けれど実際には違った。底辺よりもその下が存在してた。
その名は「奈落」さらにその下は「ぬかるみ」だった。

停まっては支払い。
警告の電話がかかってきては振込み。

生活費の支払いに追い立てられ、お金を追いかける3ヶ月だった。
私をそんな風にした父を恨んだ。そもそもの生まれを今さら恨んだ日もあった。けれど恨んでいたところで1円にもならないから、無駄なことにエネルギーを費やすことはやめた。

飼っている3匹の犬を知り合いのブリーダーさんにしばらく預かってもらうことも考えた。しかしそこへ犬を運ぶにも片道2万円と少し、往復で5万円近くかかってしまう。

うん、それはそれとして――とりあえず4月8日にガスと電気が停まるらしい。それはまずい。いちばんに考えることはこれだ! 27,000円がどうしたって要る!

1年と3ヶ月、籍を置くライブチャットの給与支払い方法は3つある。

月払い、週払い、日払い。

未払いのポイントが多ければ多いほど「取り分」が大きくなるから、月払いが圧倒的に得。しかしこの3か月は取り分の多さよりも、次々に停まるライフラインの息を吹き返すために週払いになっていた。

こういう損のチリツモが大きいことも現状が上向きにならない原因のひとつだと、頭では分かっているのだけど背に腹は代えられない。お財布を逆さに振っても大きく開いて覗いてみてもないものはなかった。

けれど3日分の未払いポイントがあった。現金にすると6万円と数千円。「これがあればガス代と電気代が2ヶ月ぶん一気に払える! よかった……!」

けれど実際に振り込まれたのは3万と少し。

急な振込依頼だったから、経理の方が計算を間違えたのかしら? きっとそうに違いない。

「清算申請した金額と大きく違うのですが」
「日払いは40%の手数料が引かれます、明記してますよ」

目の前が真っ暗になって真っ白になった。絶望と落胆で気を失いそうだった。ああ、私って今本当に貧しいんだ。貧乏って足元を見られるんだ。

「慌てる乞食は貰いがすくない」

子どもの頃にならった諺が脳裏をよぎった。人生の底辺に居ると思っていたけれど実際は違った。私はぬかるみの上にかろうじて立っていて、動いていなければ今にも沼にずぶずぶと沈んでいく。その途中にいた。

よし、決めた。三足の草鞋なんて履いてるから“甘えてしまう”んだ。週払いや日払いをしてもらえる環境にいるから、いつまでも尻に火が着かない。

うん、退路を断とう。
そしてゼロから出直そう。

ぬかるみの上であがいていても足はどうにも抜きづらい。決めた。勇気が足りなくて、うまくいかないかもと二の足を踏んでいた海外向けの仕事に着手しよう。すぐに決めよう、すぐに動こう。

完全に奈落の底にいるから、これ以上落ちることはなさそうだ!

-つづく-

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