うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #13
「この人らが追加ですわ」
山本さんがこの事態をどこかしら楽しんでいるように見えるのは、私が卑屈になっているからだろうか。12冊のクリアファイルがテーブルの上に置かれてするりと崩れた。
A4サイズのファイルが5冊と、12冊のクリアファイル。
前者は父の愛人だった人達でそれぞれに“ひと財産”になるくらいの高級マンションを買い与えていた。後者の12名はもとは会社のお客様で、父が生活の面倒を見ていたという低所得者層の女性達。
「お父さんはそれぞれの愛人さん達と一緒になりたかったみたいだから、新居のつもりで買ったんでしょうな。よくやりますわ、毎回毎回」と山本さんは肩をすぼめた。
「こっちの12人はうちのお客さんだった人らですわ。お客さんに手出すってねぇ……お父さんが家賃とか生活の面倒を見てたみたいだから、この人らはパートで稼いだ金をしっかり貯めてとっととどっかに越していきましたわ。女の人は賢いですわな」
ほんとですね。すみません。情けないです、はずかしいです。
この2日は謝ってばかり。
かろうじて声をしぼり出したけれど、後半は声になってなかったかもしれない。
そりゃ、全財産6万円になるわけか。そりゃ、母に捨てられるわけだ。
そりゃあ、子ども達と実の妹しか見送ってくれない最期になるわけね。
父の過去に触れるたびに父を軽蔑してしまう。
ファザコンになるくらい大好きだった父がきもちわるい。