うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #14
父が遺体になってから一度も泣かなかった。一度も泣けなかった。
祖父が亡くなった時も祖母が亡くなった日も、私は泣けなかった。
本当にもう願っても乞うても会うことができないとわかってようやく、優しくしてもらったお返しを満足いくほどできていないことや、立派な孫になれなかったことをわびて泣いた。
明日の葬儀に間に合うように父に手紙を書くことにした。
ちょっといい万年筆で書いたせいか、藍が滲んで何度も書き直した。
だめだ、こりゃ。
書き損じが多くて便箋がなくなってしまった。
味気ないけれど、父は読書家だったからきっと読んでくれるだろう。万年筆を置いてパソコンで思いのままに入力した。インクの藍の代わりに視界は何度かにじんだけれど、20分ほどで末筆まで終えた。
家のプリンターは壊れてしまっていてプリントアウトすると、白いはずのA4が真っ青なA4用紙になってしまう。セブンイレブンのコピー機を使うべく、iPhoneの「メモ」機能に父宛ての手紙を同期した。棺の中に入れる「家族」の写真4枚と、父が可愛がったうちの犬達の写真2枚もついでにセブンで印刷しよう。
のちに、これが“ちょっと不思議なできごと”を呼び起こすのだけど、それは少しあとの話――。