うざゴリ#17|ひとり暮らしの親の孤独死×イエスも仏も

うざゴリ

齢73にして母から三下り半を突きつけられ「ポイ」された父。
私たち姉弟の大好きだった父は今は昔。

「縦のモノを横にもしない大酒のみの頑固なウザいゴリラ」と化した父は、浴室からひとりでぽっくり旅立った。山積みの問題と未処理の面倒と、どうしようもない笑いを数多く遺して――。合掌、うざゴリ(没75)

うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #17

疲れきった身体に鞭を打ち、眠い目をこすって組み立てた「後飾り祭壇」。自転車の前かごに乗せるにはあまりに大きく、結局、葬儀社の担当者の女性が車で運んできてくれた。

往復40分。自転車を飛ばしたせいで息が上がっている。

大きいだけでさほど重くはないそれを右肩に担ぎ、時間をかけて階段をのぼった。3ヶ月半前ならそれさえできなかった。全治3ヶ月の骨折が9割がた治ったこのタイミングは幸か不幸かでいえば間違いなく幸だ。

それにしても――後飾り祭壇の存在感が強い。

邪魔か邪魔じゃないかでいえば間違いなく邪魔だ。ただ、父を独りで逝かせた罪悪感が私にはあるから、四十九日のあいだくらいはこの邪魔も違和感も受けいれる。それはそうと……違和感がすごい。

上段には、遺骨・遺影(大)・十字架(大)
中段には仮位牌・遺影(小)・花・茶器・仏飯器・供物
下段には三具足・焼香台・おりん・十字架(小)聖書

 洋 折 衷!

火葬場での待ち時間、叔母が私に頭を下げた。
「おにいちゃんがキリスト教徒なのはよくわかってるんだけど、父さんも母さんも亡くなる10年くらい前に改宗してるから、3人が会えるようにしてやってほしい」

蠟燭に着火して
線香3本に火をうつす
左手にミニ十字架を握り
右手でおりんを打ち鳴らす

今日、何十度目になるだろう。父の遺影に向かって叫ぶのは――。

「なんだこれ!」「もう疲れた!」「いい加減にして!」「なんで全財産が6万円なんだよ!」「まさか借金はないだろうね?」「あるよね?! 絶対にあるよね?! あなた、金勘定いい加減だもんね……!!」「隠し子がいたら……ほんとしらないからね」

一回生き返ってこい!
めんどうごと、全部自分で片づけてからもう一回死ね!
あーもう疲れた。坐骨神経痛と股関節が痛い!

この日を境に私は、1時間半を費やして組み立てた後飾り祭壇を叩き割りたくなる衝動や蹴り飛ばしたくなる衝動に5,000回ほど駆られることになるのだけど、それはもうしばらくあとの話。

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