うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #1
人生には3つの「さか」があると初めに言ったのは、小泉純一郎元総理だったか。それとも遥か彼方からそれはこの世の常なのか。
- 上り坂
- 下り坂
- まさか
この歳にもなると、どれもそれなりに経験してきた。
摩天楼が臨める坂を一気に駆け上がったこともあるし、転がり落ちるように勢いをつけて坂を下ったこともある。
仰け反りそうな「まさか」にも何度も遭遇してきた。
『青天の霹靂』と呼べる経験は、幸か不幸か味わっていなかった。
父が亡くなっていた。
ずいぶんと冷めたお湯に肩までつかって、腕組みをして固まっていたらしい。らしいというのは、私は“その状態”を見ていないからだ。
190cm近い大男である父は膝を伸ばして湯船につかれないことを、何十回とこぼしていたけれど、今回はそれが幸いした。三角座りのように膝を曲げていたから沈まなかった。
人生とは、なにが幸いするのかわからない。
私の座右の銘「人間万事塞翁が馬」――まさにである。