うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #24
その日は朝からあちこちのサイトにアクセスすることから始まった。
生前の父が入会したり定期購入していたものへの解約手続きが山と多い。父の死後、様々な“厄介ごと”に見舞われたけれどこれらが地味に面倒だった。
今や多くの会社が自社のwebサイトから、契約者死亡による解約手続きができるようになっている。悲しみに暮れる暇もないほど忙しい遺族に「もっとわかりやすく、もっとシンプルに解約ができるようにしてくれればいいのに……」
と、解約にたどり着くまでに何ステップも踏ませた企業名は忘れないようにメモにとった。その中でももっとも大変だったのが、NHKの解約だ。
この時代においてわざわざ「電話」をかけて解約を申し込み、書類の発行を依頼し記入し送り返さなければならないらしいのだけど……とにかくその電話が一向に繋がらない。
大げさでもなんでもなく、朝から夕方までかけ続け1度も繋がらなかった。よほど解約させたくないとみえる。
翌日、翌々日と電話をかけ続けること5日間。1度も繋がらなかった。解約の電話がつながるまで19日も要するなんてはっきり言って異常だと思う。
生き返ってきて自分で解約してもう一回逝け!
NHKへの怒りから、父に悪態。
解約手続きを重ねるごとに、“本当にもういないんだな”が重なる。
「サプリも購入してたんだ……お父さんなりに健康に気をつけてたんだ……でももう解約しなきゃね……」
健康のことなんてなにひとつまともに考えてないんだろうと決めつけていたけれど、そんなことはなかったんだ。ごめんね、お父さん。
実家から持ち帰ったいくつかのサプリの容器をまじまじと眺める。
『夜尿症に効く!』
いやいや、浴びるようにお酒を飲んで寝るのをやめれば済む話でしょ。
『足の衰えを感じたら!』
足元が危なげになってることを自分でも気にしてたんだ……。
『毎日飲むから毎日元気に!』
そうそう。毎日コツコツとね。
『忘れていた漢をもう一度! 盛りたて俺の漢!』
生き返ってきて自分で解約してもう一回逝け!