うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #2
『青天の霹靂』と呼べるほどのまさかを、見知らぬ人が運んできた。
テレワーク中に知らない電話番号からの着信。こういった場合、することはひとつだ。ポータルサイトの検索画面にその番号を入力するのだ。そうすると発信者が迷惑業者や営業電話の類であるか否かがわかる。
どうやらあくまで一個人の番号のよう。
となると、誰なんだろう。手当たり次第にかけた営業電話ではなく、私に用事があるならばまたかかってくるだろうから一旦放置。すると今後はインターフォンが鳴った。
黒いスウェットを着てぶかぶかのジーパンを穿いた、ずんぐり体型の男性がテレビドアホンに映っていた。その男性が左手に持ったスマートフォンを耳にあてると、こちらに再び着信があった。
誰なんだろう、この人は。見た目から新聞の勧誘か今では懐かしいNHK絡みの人と目星をつける。いずれにせよ、対応しない方がいい。
――いつもならすぐに流せるこの程度のできごとが、5分経って10分経っても引っかかった。喉にささった小骨みたいに取り除かなければいつまでも気分が晴れない、そんな気がした。
今にして思えば、これが虫の知らせというものなのかもしれない。こちらからかけ直そうと右手の人差し指を恐る恐る持ち上げた刹那、3度目の着信。
「何度かお電話をいただいていますが、どなた様でしょうか」
「××さんの娘さんですか?」
「そうですけど、父がなにか」
「会社にも来られていないし、連絡をしても繋がりません」
「そうですか……」
「自宅に見に行ったんですが、新聞がささったままで杖も玄関の外に置いてあるので外出されてるわけはないと思います」
「わかりました、すぐに準備します」
-つづく-