うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #31
父を「お父さん」と呼ぶ人が、私達きょうだい以外に確実に1人はいることがわかったけれど、だからといってすることはない。
認知されていない非嫡出子である新しい妹やその子の母達が権利を主張し裁判を起こしてきたら、ひと悶着ふた悶着あるかもしれないけれどまだ起きてもいないことを不安視しても疲れるだけだ。
やれば終わることからやっていく。
そうして、やらなきゃいけないことを減らしていく。
今はそれしかない。
「……いたっ」
左口角のあたりに大きな吹き出物ができた。
パンパンに腫れていて、タオルが触れるだけでも鈍く痛い。
通称“68歳伊藤さん”がボス弁をつとめる弁護士事務所に血のつながった弟2人と彼らの妻、計5人で押しかける。待ち合わせ時間はまもなく。
東出口の階段を上がって徒歩1分とかからず、伊藤さんの事務所はあった。
「お待たせ!」
「ひさしぶり……! ってこともないか」
「あ、噓みたいだ」
姉弟3人と義妹の1人が各々、顔に大きな吹き出物をつくっていた。やはり思っているよりも“見知らぬ妹”の登場は私達に衝撃を与えたのかもしれない。