うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #34
弁護士事務所のボス、通称“68歳伊藤さん”の大熱弁が琴線に触れた我ら一行は、当たり障りのないことを時々口にしながら、はなまるうどんに到着した。
家主を失っただだっ広い実家は、自らの運命が私たち姉弟の手にかかっていることを知っているはずで、売られたいのか引きとられたいのかたずねてみたくなった。
申し訳なくなるほど、家族の楽しい記憶がないあの家の次の持ち主に私はなれない。けれど“なってみるのも悪くないか”と何度かは思った。とはいえ私は独り身だし、2人の弟達にも子どもがいない。暮らすには広すぎるし、保持しておくにも“お荷物”だ。
春までに、おそらく相続を放棄されるであろうあの家に同情をおぼえた。
さいごまで好きになれなくてごめんね――。
-つづく-