うざゴリ#35|ひとり暮らしの親の孤独死×四十八日

うざゴリ

齢73にして母から三下り半を突きつけられ「ポイ」された父。
私たち姉弟の大好きだった父は今は昔。

「縦のモノを横にもしない大酒のみの頑固なウザいゴリラ」と化した父は、浴室からひとりでぽっくり旅立った。山積みの問題と未処理の面倒と、どうしようもない笑いを数多く遺して――。合掌、うざゴリ(没75)

うざゴリ~シシテ尚、迷惑をかける父へ贈る最期の小言 #35

「行先は決まりましたか?」

煙がほとんどでないというお線香『ZERO』に火を移し、おりんを鳴らす。
四十九日のあいだに生前に犯した罪を裁かれ“上へいくか下にいくか”行き先が決まると聞いたことがある。

「家族にしてきたことを思えば絶対に下だけどね、あなた」

後飾り祭壇には父の大好物、から揚げを備えた。
前日から塩こうじにつけこんでにんにくもたっぷり。大根おろしも添えたからさぞかし満腹だろう。これで心置きなく“”にいけるはずだ。

「悪いけど……これは断っておくね」

実家の郵便受けに届いていた、何も知らないお手紙やハガキ。
私達のしらない生前の父の姿がそこにあった。

去年もお世話になりました。
子どもたちも職員も大喜びでした。
今年も楽しみにしています。もう13年になりますね。

恵まれない子どもたちが集団で暮らす施設や、いくつかの障害者施設に、年に2度、自腹を切ってキッチンカーを数台手配するというボランティアを父はずっと続けていたらしい。

「家族にしてきたことを思えば絶対に下だけど、家族以外にしてきたことのなかには……善行もぽろぽろとあるみたいです」

明日には審判を下す閻魔様に、父の内申点を気持ち程度見直してもらえるよう事実を報告しておいた。

たくさんの使途不明金の行方のひとつが判明したとて、すべてが今さらだ。父のおかげで助かった人達は少なくないのだろう。だけど、血のつながった私たち家族は手放しでそれを誇ることはできない。すくなくとも今は。

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